利他心が目の敵にされる現代社会
【Mermaid】USAと倭国は日一日ごとに破損しています。私たちは歴史的な時間を生きているのかもしれません。デモクラシーは真に血が通う水準まで達しないといけない・・・。
【Zhener】そうなる前に私たち杭州新宮は倭国を脱出しないといけないね、人魚ちゃん。しかし国際的編集チームとは思ったより上手くいかないねえ。相当に薄い利他心で頑張ってるのに。
【Mermaid】利己心の強い人物は、実物よりもよく見えるそうです。まぁ見た目の印象に過ぎませんが。皆は相手の本質を見抜かなければならないのに、必ずしもそれができない・・・。ところで真児さん、今回のテーマは利己心ですか?
【Zhener】うーん・・・利己心と利他心かな。"The Selfish Giant"(Oscar Wilde)を紹介したいですね。
美しい庭園オーナーの、心の狭い大男
【Mermaid】それでは、紹介をお願いします。
【Zhener】ある大男がいました。友人の人食い鬼のところに遊びに行っていたので自宅を7年ほど空けていました。彼がいない間に彼の持つ庭園は、近所の子供たちの遊び場になっていました。
【Mermaid】まぁ、子供はどこにでも入ってきますからね。見た感じほほえましいのですが。
【Zhener】大男は結構ケチだったので、子供たちを追い払い、塀とか屋根を作って外から入れないようにしてしまい、さらには「無断で入った奴は訴える」と書いた立札を立てました。
【Mermaid】友人から考えると、この大男は人間じゃないですね。それが裁判沙汰にしようというのですか(笑)?
【Zhener】なんかおかしいですよね(笑)。ただ彼の主張自体はそう撥ねつけられるものでもないのでは、と考えてしまう自分は世間に毒されているのかな・・・。
冬が去らない庭園
【Mermaid】これで終わりということはないでしょう。続きはどうなったのですか?
【Zhener】普通季節は巡るもの。しかし大男の庭からはなぜかいつになっても春が来ず、雪も霜も降り木枯らしが吹いていた。流石に彼もおかしいと思っていたが、なぜそうなったのかはわからなかった。あまりにも偏狭だったからか、春が来てくれないのだ。
【Mermaid】結果として、利己心が自分の利益を損ねたということですね。
【Zhener】しかしここから物語は動く。偶然に彼は自分の庭園である少年を見つける。少年は木に登りたがっていたが、あまりに小さくてそれができず泣いていたのだ。
【Mermaid】オーナーの大男はどうしたのですか?やはり追い払ったのですか?
【Zhener】いや、何故か少年の木登りを手助けした。というか、木の上に載せてやったのだ。
【Mermaid】へぇ、面白いこともあるのですね。
【Zhener】それから間もなく、その庭園に春がやってきた。花々は咲きそれはとても美しかった。大男は気づいたのです、「自分が庭園を閉めてしまったから春が来なくなったんだ。これからはそんなのやめにしよう」。彼は塀も屋根も立札も撤去して誰でも入園できるようにしたのです。
年老いた大男とあの少年
【Mermaid】彼自身の心境の変化なのですね。
【Zhener】その後、庭園は美しい花が咲き子供たちが戯れるとても楽しい場所になった。大男はとても満足していた。やがて彼も年を取り、安楽椅子に揺られて庭園や子供たちを見守っていた。ただ、彼には心残りがあった。彼の瞳と心を拭ってくれた、あの少年にもう一度逢いたい。その願いは叶えられるのか?叶えられたのです。あの時と同じ小さな少年が、木に登ろうとしている。大男はすぐに駆け付けた。
【Mermaid】ちょっと待ってください。最初に会った時からかなりの時間が経過しているはずですね。なぜ少年の外見が変わっていないのですか?
【Zhener】その疑問はすぐにわかるよ。大男は少年をよく見ると、彼の両手と両足にはまるで釘を打ちつけられたような傷跡があった。大男はそれに憤慨するも、少年はとても落ち着いていた。少年は一体何者なのか・・・?
”司花女”との対比
【Mermaid】何で最後そうなるんですかね?まぁ何らかで決着をつけないといけないのでしょうが・・・。
【Zhener】ははは、人魚ちゃんそういうモンじゃないよ。私はこの小説は"One evening, the old gardener meets immortal-girl in his brossam-garden(灌園舅晩逢仙女)"のマイルド版にも感じたんだが、あなたはどう?
【Mermaid】そう言えば似てはいますね。
【Zhener】まぁアレに較べて悪人は出てこないし(ほぼ)人死にもない、美少女も出てこない。最後はワイルドだからかな(笑)?
ワイルドにしては毒がない?
【Mermaid】でも、ワイルドにしては毒がないですね。勿論これはこれで美しい物語なのですが。
【Zhener】まぁ毒がある話は他にもあるからこれはこれでいいのでしょう。しかし現実を見ると、手放しでは褒められない。世間には”善意を喰う”、”善意を利用する”輩が多いですから。
【Mermaid】そう言えば真児さんは以前もかなり憤慨していましたね。
【Zhener】そう。今の時代はお金払わなくても有効な応援ができるのに、それすらしない。もらうことしか考えていない。相手が潰れるまで依存することをよしとする連中が、実際に大勢いるのよ。
【Mermaid】そういう人たちが、どこかで目を覚ましてくれるといいのですが・・・。
【Zhener】相当難しいだろうね。連中はまず中身のある本を読まない。読んだとしても文章読解能力が低いから意味を理解できない。さらに卑しい人格の持ち主だから、自身を顧みられない。まぁ滅びゆく国にはお似合いの民度なんだろうが。