沈既済の代表作
【Mermaid】今回は" Pillow of Hándān"(「枕中記」、別名「邯鄲の枕」)を紹介するのですか。Shen Jiji(沈既済)ですね。
【Zhener】そうです。まあ月並みなんだけど、前回の「任氏伝」よりもこっちの方が知られてるんだ。優劣は簡単にはつかないけれど・・・。
【Mermaid】では、粗筋をお願いします。
道士の貸してくれた枕
【Zhener】開元七年(719)に道士の呂翁が邯鄲の旅館で一休みしていた。そこに粗末な着物を着た百姓がやってきて立ち寄った。しばらく世間話をした後、その青年―慮生―は嘆いた。自分はただ生きているだけで出世栄達とは全く無縁。日常が苦痛で仕方がない、と。
【Mermaid】確かに。理想の高い人にとって世の中に出られないというのは相当しんどいものです。
【Zhener】一通り聞いていた呂翁は慮生に青磁でできた枕を貸した。これで眠ればいい夢が見られる。宿の主はちょうど黍を蒸そうとしていた。慮生はそれを使うと枕の両側にある穴が大きくなり、彼はそこに潜っていった。
【Mermaid】状況が想像しにくいですね・・・。
【Zhener】慮生は潜っていった世界にある自分の家に帰った。数か月後に彼は名門貴族の令嬢(何故か美人だった)と結婚した。一年後には科挙に及第し、いくらか役人をした後に陝州(河南省)の知事に就任した。そこで彼は大規模土木工事(大運河建設)を大成功させ、住民は感謝のあまり功績を称えた石碑を立てた。
【Mermaid】中国では運河建設は大プロジェクトですからねえ。どこかの滅亡秒読み状態の全体主義国では単なる利権らしいですが。
【Zhener】それは現在のニュースを見てたらよくわかる。さて戻ろう。その後慮生は都に戻り今度は甘粛省の節度使に任命された。外敵が絶え間なく攻めてきていたからだ。彼はそこでも大きな武功を挙げ大変評価された。
【Mermaid】ここだけの話ですけど、この時点で「何かおかしい、これは多分夢だな」と考えたはず。
【Zhener】まあまあ。彼は何にでも有能で清廉な人物として人望を集めていたが、それをよく思わない者もいた。時の宰相であった。讒言により彼は端州の役人に超左遷された。
【Mermaid】でもまた戻ってくるんでしょ(笑)?
人生はあっという間?無価値?
【Zhener】まあそろそろ言うのが面倒くさくなってきたんで簡潔にまとめると、その後も波瀾万丈あるんだけどまあ栄耀栄華を極めたいい人生を送った、ってことなのよ。
【Mermaid】ただ、普遍的な価値はあるのでしょうね。
【Zhener】普遍的かな?今のところ極東圏くらいしか知られてないと思うけど・・・。倭国では演劇(能)にこの翻案があるよ。
おまけ知識
【Mermaid】おまけ知識があるそうですが、それは何ですか?
【Zhener】夢の中で慮生が仕えた皇帝はLǐ Longji(李隆基)。ああそうだったのか・・・。