This story is sad, beautiful, &...
【Zhener】今回は"The record that Téng Mù drank & walk in Jujingyuan garden" (滕穆醉游聚景园记)を紹介します。この作品は例によって「剪灯新話」(Qu You/瞿佑)に収録されています。でもねぇ、あんまり有名じゃないのよこれ・・・。
【Clarimonde】確かにそうですね。これは哀しいが美しい話です。しかし同時に結構凡庸で、印象に残らない。それが"Tale of Peony Lantern(牡丹灯記)"との相違点かな。
【Zhener】何らかで記憶に残る衝撃を与えることができなかった点で、敗北したわけか。それと、あたしらみたいな連中からしたらなんか腹立つ小説だよね。別におかしいわけじゃないんだけど。
【Clarimonde】私や白娘みたいな"Three tools Heroine"よりも"Monster that comes from darkside"の方が受けるのかしら?
【Zhener】いやクラリ、それは異なる。それやったら姐姐の絶大な人気を説明できなくなる。
Hangzhou city looks good in beautiful-lady, handsome-men very much!
【Clarimonde】確かこれ、Hangzhou(杭州)を舞台としたお話ですよね?だから白娘やMs.Zhu Yingtai(祝英台)の陰に隠れたのかな?
【Zhener】う~ん・・・単に魅力がなかったんじゃない?んじゃあ粗筋を行くね。
元の延祐年間(1314-1320)初期、Téng Mù(滕穆)という男が浙江省水嘉県に住んでいた。彼は26歳でイケメンで教養もある(詩を詠める)。1314に科挙が復活し、その受験のために杭州へ向かった。
【Clarimonde】中国文学の場合、主要な男性はインテリ(正確にはその予備軍)が結構いるのですね。欧州浪漫派小説もその傾向があるのですが。あれ?私妙なこと言いました?
【Zhener】えぇ、言いましたよ(笑)。それでは続きね。滕穆は杭州は西湖のほとりに仮住まいした。そこは風光明媚で、見るものすべてが美しく趣がある。その年の旧暦7月15日、彼は西湖の上に小舟を浮かべていた。酒精の効果もあってかなかなか寝つけない。滕穆は舟を降り聚景园に入っていく。
【Clarimonde】説明をします。聚景园とは南宋帝国時代の御苑です。
【Zhener】有難うクラリ。滕穆はそこに入って西軒の欄干によりかかって休憩。すると美女が女中を連れて御苑に入ってきた。彼女は詩を詠む。彼は奔放な性格であり、また彼女の美貌にときめいていたのでその前に現れ、返答の詩を詠んだ・・・なんか読んでいて私、無茶苦茶腹が立ってきたんですが?
【Clarimonde】倭国人の男は屑の比率がすこぶる高いですからねぇ・・・。中身(教養)がないと外面だけでは相手にされないのはいいけれど。
【Zhener】それと彼女の容貌は、こう表現されています。
”风鬟雾鬓,绰约多姿,望之殊若神仙”
She is ghost, but intelligent
【Clarimonde】漢字で表現されると何だか凄そうですね。
【Zhener】えぇ、どこぞのバカとはえらい違いです。しかしChang'e(嫦娥)とかZhiniu(織女)とか凄いなぁ・・・。突然滕穆が現れたものの彼女は驚きもしない。彼も彼で、彼女がこの世のものではないだろうと感じていたので動じることもなく名前を尋ねた。彼女は少し渋ってはいたが名前と素性を教えてくれた。名前は"Wéi Fānghūa(衛芳華)"、南宋の理宗(趙昀,1205-1264)の時代の女官で23歳でみかまり、聚景園の近くに葬られた。その後彼女は出会った記念に小さな宴会を開き(料理や果物、お酒は美味だった。お約束だな)、一夜を共にした。
【Clarimonde】うふふ、才子と佳人のカップル誕生ですね。定番と言えばそれまでですが。
【Zhener】翌日滕穆は西湖を散策すると本当に芳華の墓があり、その傍らには土饅頭(女中の墓)があった。彼女の言っていたことは本当だったのだ!
【Clarimonde】ということは、幽霊だってことが確定したってわけですよね?いいんですか?
【Zhener】男は性欲には勝てない(笑)。彼女は幽霊なので夜しか出られない。しかし二人は逢瀬を重ね(毎晩!)たことにより芳華はたっぷりと滕穆の精気をチャージして昼間でも出歩けるようになった。ただ、そんなことばかりしていたから肝心要の科挙には落第し、故郷に戻ることになった。
【Clarimonde】あらあら、それじゃ本末転倒じゃないですか。及第さえできれば杭州で誰はばかることなく愛し合えるのに・・・。この点はいただけませんね。
【Zhener】ははは、そう言いなさんな(笑)。その際に彼女は同行したいと言い(女中は留守番)、彼もそうすることを望んだ。地元では滕穆は彼女について本当のことは伏せておいた。彼女は容貌も立ち振る舞いも優れていたのですぐに打ち解け、皆に好かれた。また人々はこんな妻を連れている彼をうらやましがった。
【Clarimonde】まあ♥♥♥。
【Zhener】科挙には合格できなかったが、彼はそれに勝るとも劣らない妻と日々を手に入れた。それはまるで夢のような時間だった。そして三年の月日が流れた・・・とりあえず、ここまで!
余談
【Clarimonde】まあここまで来るとこの恋にどのような結末が訪れるのか、何となく見当がつきます。”哀しく美しいが陳腐”は既に評したので別のことを。彼女、女官だったこともあって結構レベルが高い女性ですよね?外面も内面も両方持っている、という意味で。
【Zhener】えぇ。正直言うとこの辺がHu Liqing(符麗卿)やTsuyu Iizima(飯島露)との違いですかね。公平のため書いておくと私Bai Zhenerもそうですが。”真の意味のいい女”と単なるSe× Monsterとではなぁ。
【Clarimonde】しかしパンチなり迫力なりが足りなかった。その点は悔やまれますね。それがQu Youの限界だったとしても。
【Zhener】あと、Ryoi Asai(浅井了意)がこれを翻案している。舞台は洛北(現京都市北区)の鹿苑寺。ただ、これも大して受けなかった。あれ?コイツも「牡丹灯篭」書いてるけど、舞台が五条通り周辺(現京都市南区~下京区)じゃなかったか?
【Clarimonde】でも素材は悪くないから、後世の物書きにはチャンスなんですけどねぇ?