ゴーティエらしからぬ?切なさ
【Zhener】今回紹介するのは"La cafetière"(『コーヒー沸かし』,1831)。Theophile Gautierの短編小説です。何だか切ない、そんな内容です。
【Clarimonde】私とどちらが切ないですか、真児?
【Zhener】クラリの方が切ない、って私が言うと思う?
青年が体験した不思議
【Clarimonde】(ムッ)・・・それじゃあ真児、粗筋をどうぞ。
【Zhener】主人公の青年は友人に勧められてノルマンディーに遊びにやってきた。雨に降られて大変に疲れた状態で宿についた彼は、すぐにベッドに入った。なかなか寝付けなかった彼は、部屋のタペストリーを眺めていたのだが・・・
【Clarimonde】そこで何かが起きたのでしょう。
【Zhener】はい。夜11時頃にコーヒー沸かしやら肘掛椅子やらが動き出し、肖像画から人が次々出てくる。そして日付が変わった頃からはそれらが踊りだす!
【Clarimonde】青年は「決して気が触れたわけではない」と前置きしています。ところでこの小説もロミュオー同様に一人称なんですね。
【Zhener】そんな中、踊りに加わっていない一人の女性がいた。色白でとても美人。”アンジェラ”という名前の彼女に彼は一目惚れしてしまう。彼女と話すことができてとても楽しい時間を過ごせた。さて、彼女はいったい何者なのか・・・。
感受性が強いと不幸になる?
【Clarimonde】まあ、他愛のない恋の物語ではあるのですけどね。私や白娘みたいな狂暴な話ではないし。
【Zhener】パターンと言えばそれまでだけど、感受性の強い人物は不思議な世界の扉を開けるんだよねえ。うちの義兄といい、あんたの男といい。そうしないと物語は始まらないから仕方ないけど。