聊斎先生の妄想炸裂?
【Zhener】今回紹介する話は「俠女」。『聊斎志異』に収録されています。
【Mermaid】倭国だと反社(地下社会)の女性を指すのですが、この女性もそうなのですか?
【Zhener】違う。『聊斎志異』はあまり反社は出てこない。代わりにこの作品は聊斎先生の妄想が過不足なく盛り込まれている。
【Mermaid】なんだか凄そうですね・・・では粗筋をお願いします。
この物語の簡単な粗筋
【Zhener】金陵(現南京)在住の顧生は老母と同居している貧しい書生。書画を描いては売りに出し生計を立てていた。そんな彼の近所に歳の頃なら18歳くらいの大変な美少女とその母、と思われる老女が越してきた。彼女の家も貧しかった。少しづつ交流が生まれるのだが、彼女は極端に表情が乏しかった。
【Mermaid】うわぁ、私とは異なるクール系美少女ですね。結構ポイントが高いかな。
【Zhener】その頃偶然に顧は軽薄な美少年と・・・まあ、それなりの間柄となる。美少年は彼に例の美少女はなぜあんなに冷ややかなのか、と話しかける。彼は彼女に声をかけたら相当邪険にされたらしい。
【Mermaid】それは軽薄だからでしょう。
【Zhener】それから美少女は顧に「美少年に言っておけ、死にたくなかったら近づいてくるな」と言う。しかし美少年はこの二人に近づいてくる。彼女は怒って匕首(刃渡り約30㎝)を抜く。血相を変えて逃げ出す美少年、そして・・・。
【Mermaid】なんだか凄い話ですね。
正体不明の謎の美少女
【Zhener】さて、実質的な主人公であるこの美少女。普段は針仕事で家計を支えている。匕首もただ持っているだけではなくかなり使う。当然容姿は大変いい。また占いやら物事の本質を見抜く眼力も持っている。
【Mermaid】なんだか現在の倭国の軽小説に出てきそうですね・・・。
【Zhener】人魚ちゃん、そう言うな。軽小説にもいろいろあるからね。
【Mermaid】でもそれだけの女性が何で貧乏書生の顧生と恋人になるのですか?もっと言うと、もっと条件のいい場所にいられるのでは?武術を身につけている女性って清帝国前期ではそういないでしょうから。
【Zhener】確かにね。それについても終盤に明かされるよ。それはここでは言えないけど。
聊斎先生は生まれた時代が本当に悪かった
【Mermaid】好き嫌いはあるのでしょうが、この話は「木蘭」より一般向けの様な気がします。まあ黒鼠団が知らないとも思いませんが・・・。
【Zhener】「木蘭」はそこまで好かれている話でもないですからねえ。だから「奪われても別に困らない」と考えたのかな。一方で「侠女」は何度か映像化されてるよ("A Touch of Zen")。
【Mermaid】そう考えると、聊斎先生は生まれた時代が本当に悪かった。
【Zhener】もし彼が20世紀後半以降のOECD加盟国に生まれたら、まあ筆で食べていくことはできたでしょうな。
「唐代伝奇」の影響
【Mermaid】聊斎先生は唐代伝奇からも影響を受けていますが、この作品もそうでしょうか?
【Zhener】当然。この作品は多分「謝小娥伝」がルーツだろうな。読後感は天才・夢龍のおっさんよりいいかもな。
【Mermaid】現実的かどうかはさておき。
【Zhener】でも、小説は必ずしも現実をトレースするものでもないだろ?